屈折する星屑エセー

本職は医療従事者ですが雑記帳として綴ります。

AIで革新的インフル判定

早いもので今年もいつの間にかインフルエンザの季節到来。初冬から春にかけ多くの人の命を奪っていくインフルエンザウイルスという名の死神。そんな死神対策への朗報が大阪大学から届いた。
なんと、これまで罹患の判定が難しいとされてきた感染初期でも高い精度で陽性と診断される方法が開発されたという。

 従来の方法では検出が難しかった感染初期のインフルエンザウイルスを高感度で検出し、インフルエンザの型も判別できる技術を開発したと、大阪大産業科学研究所などのチームが発表した。成果は英科学誌サイエンティフィック・リポーツに掲載された。

 チームの川合知二・特任教授(ナノテクノロジー)らは、直径が1ミリ・メートルの約3000分の1という小さな穴に電圧をかけてウイルスを通過させ、形や表面の状態などの違いから、人工知能(AI)を使って型を見分ける技術を開発した。国内で流行するA型2種類とB型のインフルエンザウイルスで確かめたところ、同じ型のウイルスが10個あれば、95%以上の精度で型を判定できたという。

  実際の検査では、鼻の粘液などを使って調べることを想定している。従来の検査キットは、インフルエンザの発症初期に診断がつかない場合があり、チームは早ければ年内にも臨床研究を始め、従来の検査キットと性能を比べる計画だ。

 研究を担当した筒井 真楠まくす ・准教授は「感染直後に正確に診断できれば、早期治療と感染拡大の防止につながる」と話している。

ヨミドクター(読売新聞).  「インフル初期に高精度診断.阪大チーム、AIで型も判定」.2018年11月26日 インフル初期に高精度診断…阪大チーム、AIで型も判定 : yomiDr. / ヨミドクター(読売新聞)

 

まだ実験段階であり実用化されるまでは時間がかかるだろうが、これは相当に画期的な手法だ。私としてはノーベル各賞の偉大さや学術的価値は難しくてよくわからないが、この発見においてのすごさはよくわかる。もちろん原理はわからないのは同じだが笑

と、いうのも短時間で高い精度で判定がなされる。これは当たり前に聞こえるかもしれないが今現在のインフルエンザ検査キットは短時間で結果は出るものの“感染初期”では陽性反応的中率がグンと下がる。

 つまりインフルに感染しているのに感染していないとの結果を出す場合がある。これを偽陰性という。詳しくは別記事を参照。

 

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現インフル検査キットはインフルの症状(熱発・咳・筋肉痛など)を自覚して時間が経過するごとに陽性の判定が出やすくなるというものだ。廣津医院(川崎市)の廣津伸夫院長のデータを参考にしてみると、発症初期(引用データでは発症後6時間)の段階ではインフルA型(H1N1pdm)やインフルB型では陽性が8割前後になっている。

発症後0−6時間の陽性率

インフルエンザA型(H3N2)90%

インフルエンザA型(H1N1pdm)77.2%

インフルエンザB型 80%

m3.com 発症12時間以内は陽性出ない」は誤解【時流◆インフル迅速診断】2017年12月7日

「発症12時間以内は陽性出ない」は誤解【時流◆インフル迅速診断】|時流|医療情報サイト m3.com

つまり初期段階で陰性と判断された人の1〜2割はその後の検査で陽性となっているのだ。もっともインフルエンザA型(H3N2)においては90%の精度があることがわかる。しかしながらこれは危険な状況だといえる。

ケーススタディ
例えば、サラリーマンA氏。風邪の症状が出た後に、万が一のインフル感染に備え早めに受診をする。そこで鼻に綿棒を突っ込まれ、インフル検査キットに粘膜が入れられる。30分後に診察室に呼ばれドクターから「インフルではありませんよ」と言われる。ホッとひと安心。よし、これで症状も軽いし仕事を頑張ってみよう、と通勤電車に乗る。そこで鼻がムズムズしてくしゃみをする。手で口元を覆ったものの、突然だがそこでthe end。

  • A氏が感染の初期段階(6時間未満)だったとしたら。
  • A氏が偽陰性のひとりだったら。
  • 同じ車内に老人や子供が乗っていたら。
  • A氏が掴まった吊り革を別の人が握ったら。

飛沫感染のインフルエンザウイルスは空気中を漂い、もしくは付着物経由で人から人に広がっていく。A氏のように症状が軽く動ける人にとって、発症後有効な検査結果の出やすくなる時間まで家で待ち病院に行くだろうか。
強力な感染力を持つインフルエンザウイルスの感染において初期段階の弱点である偽陰性がどれだけの社会的損害を与えるか。想像すると恐ろしい。

実際に前の職場(とある総合病院)の同僚がインフルエンザにも関わらず、鼻かぜかな?くらいのテンションでいつも通り仕事をしていたというのがあった。夕方受診して満を持してのインフル陽性。翌日から出勤停止になったのだが、周りは院内アウトブレイクの恐怖と同時に大丈夫か自分!?と二重の意味でソワソワしたのを覚えている。

今回の阪大の研究は精度を95%まで高めるというものだ。早く実用化されてほしいが検査キットが実際に販売されたらキットお高いんでしょうね。それを町の診療所やクリニックがコスト面で導入しなければ開発された意味がない。じじばばちびっこはいきなり大病院に行かない。まず近所のかかりつけ医に行くだろうから。

なんにせよAIってすごい。なんでもAIの時代が来ているなと日々痛感。

みなさま正月明けましたがご自愛くださいませ。