屈折する星屑エセー

本職は医療従事者ですが雑記帳として綴ります。

孤独な高齢者は死か要介護を選べ

人生100年時代が到来しようとしている。

100歳のイメージは私たちにとって

「きんも100歳、ぎんも100歳」

そう、明治生まれの大スター金さん銀さんだった。彼女達は全国的な著名人になってしまったが、地方においても100歳を超える高齢者は地域のちょっとした有名人だった。それほど長生きの人はそうそういなかったのである。

しかし時代は大きく変わってしまった。この記事をみてほしい。

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 『産経新聞電子版』2018年10月11日朝刊 24ページ「女性3分の2が90歳到達」

女性寿命

昭和25年(1950年)以降生まれた女性の3分の2が90歳に到達。さらに驚くべきなのは1980年以降生まれた女性は2割も100歳まで到達するという予測である。ものすごい数字だ。既に日本は超高齢社会に突入している。

私は病院勤務のため、患者さんのほとんどは高齢者だ。しかし、病院から一歩外に出てもひと昔前と比べて人種の構成比率が異なっていると実感する。外国人と高齢者が圧倒的に増えている。そう思わないだろうか?(外国人については論点がそれるため省く。)

 男性は早死

私が着目した点は男性の推計だ。男性は女性に比べ圧倒的に長生きできない。

1950年以降生まれは7割が80歳に到達するものの、90歳を前にして3割ほど亡くなってしまうのである。100歳まで長生きする男性は数パーセントに過ぎず、女性の約20%には遠く及ばない。

女性強し。

しかしどこからこの差がうまれるのだろうか。

もちろん女性という種は男性より強いという生物学的理由もあるだろう。しかし今回は社会的な影響から健康への影響についてみていきたい。

ここで別の記事を引用する。

孤立高齢者、介護や死亡リスク1.7倍 筑波大など調査 

研究チームは滋賀県米原市と協力し、同市内の65歳以上の人を対象に調査。有効回答が得られた6603人について、2011年から6年間、要介護認定を受けたり死亡したりする割合を追跡した。

社会的なつながりが健康に与える影響を調べるため、(1)近所付き合いがない(2)独居(3)老人会や地域の祭りなど社会活動への参加がない(4)経済的に困窮――の4項目の指標を設定。このうち2項目以上に当てはまる人は、6年間のうちに半数近くが要介護や死亡となり、4項目に全く当てはまらない人に比べ1.7倍、割合が高かった。

社会的な孤立に加え、運動・認知機能など心身の活力が低下した「フレイル」という状態になった場合、要介護や死亡の発生率はそうでない人の2.3倍と、さらにリスクが高まった。

研究チームの山田実・筑波大准教授(老年学)は「介護予防で運動の呼び掛けは一般的に行われているが、例えば『みんなで話しましょう』といった社会的な交流を促す取り組みも重要だ」と指摘している。〔共同〕

 『日経新聞』「孤立高齢者、介護や死亡リスク1.7倍 筑波大など調査2018.11.4 17:58

孤立高齢者、介護や死亡リスク1.7倍 筑波大など調査 :日本経済新聞

 高齢者の孤立は死を招く

意外なことに社会的な孤立は死を招くと調査結果が訴えている。性差による肉体的理由だけではなく、社会との関わり方においても寿命を決めるとしている。

恐ろしいのがこの4項目の指標のうち2項目以上に当てはまれば6年以内に半数が死亡か要介護になるとしている。

  1. 近所付き合いがない
  2. 独居
  3. 老人会や地域の祭りなど社会活動への参加がない
  4. 経済的に困窮

このうち2つに該当というのは死亡と要介護へのハードルがかなり低く感じられる。2つどころか4つすべてにあてはまる高齢者はかなりの数いそうだ。

 高齢男性が危ない!?

そして私は男性に多い印象を受ける。特に1と3の近所付き合いや社会活動に参加する項目だ。私見だが、男性は女性にくらべてコミュニケーション能力が劣っている気がする。おばちゃんのコミュ力は相当なものがあると日々痛感している。男性が退職後にいきなり地域の輪に入っていくのは難しいだろう。仕事人間だった本人にとっても近所付き合いや老人会への参加は気が乗らないのではないか。巷でよく聞く話だが「うちのとうちゃんは家にひきこもってテレビばっかり見てる」という引退したご主人を持つ主婦の嘆きを。

病院の待合を見てもそうだ。高齢女性が患者だった場合は一人で診察に来るが、高齢男性が受診する場合は奥さんも同伴してくる。これにはいろいろな理由があるのかもしれないが、高齢男性一人で退職後再び社会と関わるにはよほどのストレスがあるに違いないと推察する。実際に自分が同じ境遇に置かれても外に出ていくだろうか、と思う。

 生涯未婚率上昇は死期を早める

さらに現在、生涯未婚率(50歳時の未婚割合)が上昇中である。

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 内閣府「 平成30年版 少子化社会対策白書(全体版<HTML形式>)第1部 少子化対策の現状(第1章 3)|平成30年版 少子化社会対策白書(全体版<HTML形式>) - 内閣府

内閣府の予測では生涯未婚率は2040年には男性が29.5%、女性は18.7%となっている。

あと20年後には将来的に同居するパートナーがいないため男性の約3割、女性の約2割が自動的に上の4項目のひとつである「独居」にチェックが入ってしまう。

まとめ

特に退職によって社会とのつながりが絶たれる男性にとって、未婚や離婚というのはますます死亡や介護へのリスクが増大する原因の一つになるだろう。

昔とは異なり、現代は幅広いライフスタイルが社会的に許容されてきている。価値観の柔軟性が叫ばれているが、高齢者になった時のリスクも権利と引き換えに背負っているという自覚を持たなければならない。

次回予告

次回は高齢者が社会と関わりを持ち健康寿命を延ばすためには何をすれば良いのか、考えてみたい。