屈折する星屑エセー

本職は医療従事者ですが雑記帳として綴ります。

鍼灸&整体師さんごめんなさい!看板についてひとこと申し上げますわ。

2018年12月18日付産経新聞朝刊1面に『指圧や整骨 不正広告横行』と題された記事が掲載された。

街で見かける看板は違反だよ!

記事によると指圧師、鍼灸師、柔道整復師が運営する施術所で法律で認められていない広告を店頭やチラシに掲示しているというものだ。

・適応症の記載   骨折・脱臼・打撲
・料金表示の記載  初診○○円
・医療機関と誤認する表示  ○○療院・○○治療所
・「交通事故」取扱い 

『産経新聞』「指圧や整骨 不正広告横行」2018年12月18日朝刊1面

遵法施設は存在するか

具体的にこのような文言を看板やチラシに入れることは違法だと指摘するが、実
際にこれらの掲示がない整骨院は存在するのだろうか。

おそらく存在しない。正確に言えば存在“できない”のだろう。みなさんも通勤通学散歩の途中に必ず数件は目にするだろう施術院を意識して見て欲しい。これらの施設は必ずと言っていいほど上記のワードをと掲げている。

私もこの記事を読むまでは疑問にも思わなかった。そういうもんなのか、と店の
前を素通りしている程度。それは私自身が幸運にも施術院にお世話になるほどの
身体的な悩みが全くない人生を送って来られたからだ。インドアなせいもあるが
スポーツでのケガなどまるで縁がない。(骨折はあるが痛みも長引かなかったの
で整体には行かなかった。)

患者さんからすれば最後の砦

しかし、ここで慢性的な痛みに悩む患者さん達の目線に立ってみる。事故の後遺症や慢性的な腰痛・頚部痛・肩こりなど様々な症状に悩む患者さんにとって各種施術院は希望を託せる最後の砦となっているのも確かだ。医療機関においての治療が終了し、痛み止めや定期フォローの対処療法に切り替わった患者さんにとって、目の前の痛みの原因を根本から除去してくれる可能性が“ありそうな”施術院は聖地となり得る。
痛みからの解放を希求する人々にとって施術院の看板はドラクロワの勝利の女神が掲げる旗そのものに映るであろう。確かに施術院の数が増え、同業者での患者の奪い合いが過熱するとサービスのみではまかないきれないものがある。

日本全国一体何軒あるの?

全国柔整鍼灸協同組合・東京事務所の担当者へのインタビュー記事を紹介してみる。

街中でよく目にする整骨院、接骨院、鍼灸院などの看板。ふと気になり調べてみると、その数なんと全国で8万軒オーバー(2016年)。コンビニの総店舗数が約5万5000軒と言われる今日、すでにそれを大きく上回っています。

(中略)

1998年に「どうしてもっと増やしてくれないんだ」という裁判が起こり、これをきっかけに専門学校開校も緩和され始めました。それまでは10数校しかなかった専門学校が、気付くと100校を超えるようになりました。それに比例して受験者数と国家資格を取る人たちが増え、卒業後就業する人たちが増え、これだけの数になったということですね。

実はコンビニよりはるかに多い整骨院 1998年の規制緩和以降に増加 - ライブドアニュース

日本のあちこちにあるコンビニよりも施術院は2万5000軒以上も多い事実。いかに通りすがりの新規患者を取り込むか。標榜で稼ぐPR合戦となっている。

ケーススタディ

このデータを踏まえ、指摘にあるような具体的症状を掲示してみる。例えば「
通事故・骨折・脱臼・治療所」と横並びで書かれた場合、私なんかは『整形外科
とどう違うの?』と思ってしまう。“事故”による“骨折”や“脱臼”を“治療”するところは病院ないしはクリニックや診療所である。整骨院では骨折や脱臼後のレントゲン撮影もできないし整復もできないのだ。柔道整復師は国家資格ではあるが、厳密にいう整復とは医療行為であり本来あるべき位置に骨を戻すという行為は医師にしか認められていない。実際に骨が折れたり関節が外れた後、真っ先に整骨院に駆け込む人はそうそういないであろうが紛らわしい看板は急を要する人にとって整形外科クリニックに映るかもしれない。

保険適用の意味

さらに付け加えるならば、ほとんどの鍼灸整体施設は「保険適用」と掲げる。だ
が健康保険の適用を判断するのも医師の専権事項であって整体師ではない。医療
機関は医師の指示のもと各種健康保険が使える処置や検査やリハビリや処方があ
るのだ。看板ではどこの○○という医師の診察、指示のもと○○先生から委
託を受けた私(鍼灸整体師)があなたに△△という保険適用になる処置をします
よ。という文面がすっぽり抜け落ちている。そんなの知ってるよ!と言われるか
もしれないが、医療従事者ではない人からすれば施術院に行けばなんでもかんで
も保険の利く治療をしてくれると勘違いされないだろうか。そこには保険を適用
させるための医師の判断が不在である。

結語

ここまでつらつらと書いてきて結局あんたは何が言いたいのかと問われたとこ
ろで私の主張は特に無いが(無いのかよ!)、改めて考えてみると整骨院や鍼灸
あん摩施設の看板は確かに紛らわしい。
これらが法規違反という事実は、独立を視野に資格取得を目指す業界のため、
必ず養成校で耳にタコができるほど教授陣から言われてきているだろう。しかし
独立し多額の初期投資の返済がのしかかっている状況でお咎めなしの違法広告に甘んじているのが現状かもしれない。

 

鍼灸・整体師さんにかなり厳しい報道と記事になってしまいました。分野は違いますがお互い医療福祉のため貢献していきましょう。