屈折する星屑エセー

世はさだめなきこそ いみじけれ

小児頭部CTは撮ればいいってもんじゃないと思う。被ばくの3原則。ちびっ子と認知症患者との戦い。新戦略。

 

さて今日は午前中からCTのメーカー(海外大手)、アプリケーションの人に教えてもらいながら撮影のプロトコル(設定)を組んでおりました。

幸い、CT検査が混んでなかったもので時間的に余裕があり設定を完了することができました。

撮影プロトコル設定

一体何をどうしたのでしょうか。

はい!モニターの前のあなた!興味が無いでしょうがもうちょっとお付き合いください。被ばくの防護について語りますから!

改善点

CTの画像の質は落とさずに撮影完了までの時間を短くする。

それは機械の性能によるんじゃないかと思われるでしょうが、その通り。

ハイエンド機種になると一瞬で撮影が終わる場合もありますが、うちの機械はもうそろそろ時代に取り残されていくかもしれないちょっと前の機体です。ですが、設定をいじってやることでできるところまで頑張っちゃおうという目的です。

なんで撮影時間短縮の必要性があるのか

近所の幼稚園小学生、養護学校の生徒さんが頭の検査でよく来るからです。気質的にというよりも外傷ですね。頭ぶつけて来院するのですが、子供はこんなにすっころぶ生き物だったのかと自分の幼少期を棚に上げて感心しています。

そこで問題なのがちびっ子はよく動く

5歳くらいになると分別良く話を聞いてくれるのですが、1~4歳までのお子さんは強敵ですね。ギャン泣き。そして養護学校の生徒さんや発達障害のお子さんはCT断固拒否。白衣の職員はみんなホワイトデビルに見えるのでしょうかね。

CTは動きに非常に弱い検査ですので、なんとかなだめて検査しようとするのですが限界があります。

「あきらめたらそこで試合終了ですよ」

元ホワイトデビルの声が天から聞こえますが「いやぁむりぃ」と何度あきらめようと思ったことか・・・。

まぁ大概は撮影した結果は全然たいしたことありません。明らかに激しい場合は大病院に運ばれますからね。しかしそこは親心ですし、監督責任の学校のメンツもありますし、病院側だって検査を受けてもらって収入につなげたいはずです。

一番のしわ寄せはいつだって現場です。

「院長、患者さん固定できません!事件は現場で起きてんだ!」

と叫びたい。さらに叫びたいのが、

多少頭ぶつけたくらいでCT撮らなくてもいいから!自分も含め昔の子供はCTなんか撮ったことないから!過保護すぎる!被ばくの方が問題だから!頭は線量多いのに!!
と思うのですがね。

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すぐCTを撮りたがる理由として

  • 晩婚化による過保護の風潮
  • 国民一人当たりのCT台数世界トップレベルの日本

という側面があるのかもしれません。憶測の域は出ませんけど。

以上のような背景から、動きまくる乳幼児そして認知症患者の隙を突き一瞬で撮影できるプロトコル作成に取り掛かったのです。

といいますかね、ユーザーが作らなくても普通はCTを購入した時にデフォルトでその設定が入っててもいいと思うのですがね。なんで自分でつくらないといけないのですかね。(細かく言いますと、小児のコンベンショナルスキャンは入ってますが、なんで小児ヘリカルスキャンも入れてくれてなかったのだろう)

とまぁグチはここまでにしておきまして放射線防護の考え方をみていきます。

防護の3原則

実際に今回の設定をするうえで大切なのは防護の3原則に則っているか、ということです。

世界の放射線による被ばくは三原則に照らしてそれにかなうものでないといけません

では防護の三原則とはなんでしょうか。

国際放射線防護委員会(ICRP)の防護の三原則

  1. 防護の正当化
  2. 防護の最適化
  3. 線量限度の適用

これは超重要項目です。これを知らないと養成校は退学レベル、技師は解雇レベルです。ひとつずつみていきます。

防護の正当化
放射線を使う行為は、もたらされる便益(ベネフィット、メリット)が放射線のリスクを上回る場合のみ認められるという大原則です。

 

防護の最適化
アララの原則(AsLowAsReasonablyAchievable)
個人の被ばく線量や人数を、経済的及び社会的要因を考慮に入れたうえ、合理的に達成できるかぎり低く保つことである。
社会・経済的なバランスも考慮しつつ、できるだけ被ばくを少なくするよう努力するということで、必ずしも被ばくを最小化することではありません。
防護の最適化を進めるために利用されるのが線量拘束値参考レベルです。

 

線量限度の適用
国際放射線防護委員会ICRPの2007年勧告では放射線作業(緊急時の作業を除く)を行う職業人の実効線量の限度は5年間で100ミリシーベルト、特定の1年間に50ミリシーベルトと定められています。
 (中略)なお医療被ばくには線量限度を適用しません。

https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h28kisoshiryo/h28kiso-04index.html#h28_4.1

環境省_放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(平成28年度版)第4章 目次

以上、環境省のHPから引用しました。
放射線によるがんや白血病の現れ方は確率的です。つまりごくわずかな線量を被ばくしても発生の可能性があることからこの三原則を守りましょうねとなっているわけです。

以前も関連記事を書いております。

www.ladystardust.space

参考レベルを参考に

そこでCTの設定をするうえで基準としたのは、防護の最適化のところで出てきた“参考レベル”です。

これはまた記事としてまとめるとしてこの参考レベルを“参考”にですね、ヘリカルピッチだの線量mAの上限だの、再構成スライス厚だのいろいろとアドバイスを受けながら完成させたのでございます。

実際にファントム(標本)を撮影した結果、画質も他のプロトコルと変わらないことがわかりまして、私の午前中をすべて潰して高速頭部CT設定が完了いたしました。これで我々にできる最善の策を施したといえるでしょう。

けどね、

ちびっこのみんなに伝えたい。

頭ぶつけないでくれ!
たんこぶ作ると大人は心配しすぎるから常にヘルメットかぶってくれ!

検査に来ても痛いことしないからそのまま寝といてくれ!

ポンコツ技師のかなわぬ願いでした。

速さの犠牲となったもの

なぜブログにこのテーマを載せたかというと、今回の設定で速さと引き換えに犠牲にしたものがあるからなんです。

放射線です。

高速撮影の引き換えに放射線量高めにしておりますゆえな。

親御さんの心配な気持ちはわかりますが、CTはレントゲンと異なり被ばく量が多い検査です。特に頭は頭蓋骨のせいで線量高くしないと脳みそ見えない問題があります。

ポンポン受けていい検査ではないということを頭の片隅にでも置いといてください。

 

最後まで読んでいただきありがとうございました。

読者のみなさんを引き止めた甲斐があったなー!