屈折する星屑エセー

世はさだめなきこそ いみじけれ

「グレートハック SNS史上最悪のスキャンダル」NETFLIX 教育と洗脳は手段は同じ。

あなたの投票は本当に自分で決めた一票だろうか。

 

映画「グレートハック」の主題はこの一言に尽きるのだと思う。

詳しい解説レビューはコチラをみてもらいたいのだが

cinemandrake.com

 

簡単に紹介すると、本作品では Facebookの個人情報を利用して有権者を情報で洗脳することで2016年のトランプ大統領の誕生とイギリスの EU 離脱(ブレグジット)を成功させたという事実を描いたものだ。

かるくネタバレ

前者では民主党と共和党の激戦州において説得可能者(the persuadables)と呼ばれる支持政党を特に持たない(持っていても支持が弱い)いわゆるノンポリ・無党派層を狙って膨大な宣伝を打ち、行動を変え最終的に共和党に投票させる。

その結果、接戦の州は次々と共和党が押さえトランプ陣営に有利に展開。これがトランプ大統領誕生につながっていく。

では“説得可能者”にあたる人々はどうやって選別されたのか。

この映画の一つの焦点でもあるのだが、それは Facebook 利用者5000万人の個人情報から判別されていた。

ユーザーの知らないところで自分自身の個人情報が分析・利用されアメリカ大統領選という世界を左右する選挙結果すら操られる可能性が指摘された。

黒幕は選挙で参謀を務めたコンサルタント会社ケンブリッジアナリティカ(Cambridge Analytica)であった。

CA の関与が明るみになるにつれ CA 社長のアレクサンダーニックスと Facebookのマークザッカーバーグは個人情報の不正利用でアメリカ議会に呼ばれることになる。

ちなみにCAの副社長でもあり、名付け親でもある人物はあのスティーブ・バノンである。

筆者の感想

本作品は複数の視点を持って鑑賞できる。

観た人その数だけ解釈やテーマが存在しているのではないか。

企業による個人情報の利用や民主主義の危機、ノンポリの罪(今世界の潮流であるポピュリズム)、テクノロジーによる社会変革などなど多岐にわたるテーマが盛り沢山でストーリーとしては平易であるものの深い考察が求められる。

まず筆者が考えたことは、人間は視覚と聴覚による情報で行動が変わるというものすごく当たり前の事実だ。

目と耳からの情報はつまり教育がそれを利用している。教育で行動原理が変わることは普通のことである。例えば戦後世代はどうしても護憲思想を持ちやすく、韓国では幼少から反日を是としてしまう。これも教育の影響だ。

 

作中では CA のやり口を非民主主義とするジャーナリストが登場する。

キャロル・キャドワラダー(Carole Cadwalladr)だ。

真の自由と公正な民主主義のために彼女はFacebookと戦い、ブレグジットを問題視する。個人情報がプロパガンダに使われていると。

 

テレビやブログ、SNS など全ての情報は目と耳から入る。フェイクニュースによる洗脳も教育が人格を形成するのと同じ手段を用いている。

 

また、Facebook の個人情報が本人の意思に関係なく選挙活動に利用されたという点が印象に残る。個人情報がトランプに投票する“教育”に使われたとする部分である。

これに対して興味深い記事が昨日付けの新聞に出ていた。

フェイスブック、個人データ活用制限 外部サイトの履歴、新機能

米交流サイト大手フェイスブック(FB)は20日、FBが外部サイトやアプリから集めた利用者の使用情報を広告で活用するのを制限できる新機能を発表した。情報流出問題を受けてFB不信が強まっており、情報管理機能を充実させる。

 FBは、連携している外部サイトやアプリから収集した情報を分析し、利用者の関心に合わせた「ターゲティング広告」をFBや傘下の写真共有アプリ「インスタグラム」などに配信している。例えば、バッグのサイトで、ある商品をクリックした利用者に対し、その商品の広告がFBなどで表示される。

 新機能では、どのサイトやアプリが、利用者の使用情報を集めているのか確認でき、その情報と利用者を関連付けることを解除できるようになる。解除すると、利用者の好みとは関係しない広告が表示される可能性が高まるという。(共同)

2019.8.21 08:25

これはあくまでターゲティング広告をユーザーが解除できるのであって、自身の情報やこれまでの履歴の他社への利用を拒否できる性質のものではない。情報はFacebook に残るしそれらがそっくり譲渡される可能性がある。この Facebook の対応は本作品の問題点の解決策にはなっていないと思う。

 

また、ネット履歴に関して最近社会問題になったのがリクルート社の辞退予測データ売買だ。

これも作品で描かれた大統領選と同様に、リクルート社の持つ就活生データが顧客企業の利益になるよう取引されていた。

これらから導かれる結論は自分のデータは自分で管理しなければならないということだ。

 

個人情報管理について劇中ではデイビッド・キャロル准教授がCA社にある自身の情報公開を迫る。個人情報は自分自身が完全にコントロールしなければならないという主張だ。

例えるなら各銀行にある本人名義預金のようなものであろうか。

G社、Am社、F社、Ap社が持つ自分自身に所属する情報は他社への移動も含め全て自分の管理下に置く。

筆者もこの准教授と同じく自分の個人情報管理=データ権には賛成である。

自分の情報がどこにどれだけありどう使われたのかを把握しておくことは当然知る権利に該当するだろう。また完全に削除できる権利も絶対的に必要だ。

しかし今や個人データは企業にとっての資産である。

個人情報は分析がいのある貴重な資料であって、金のなる木を早々手放すことはないと思う。准教授の開示請求が無視されたように。

データビジネスは儲かる。

 f:id:xray-stardust:20190823160121p:plain

『監視資本主義』の衝撃を学ぶ教材としてのNETFLIXドキュメンタリー『グレート・ハック:SNS史上最悪のスキャンダル』|市川裕康 (メディアコンサルタント)

まとめ

鑑賞後ひとまず安心した。筆者はFacebook をやっていないのだ。

Facebook は世界人口1/3のユーザーの個人情報を持っている。

自分がその中に入っていないことで筆者に干渉できる素材がないと思ったのだが、その認識は本質を全く理解していないと言ってもいい。

なにも Facebook だけが個人情報を持っているのではないからである。

このブログがいい典型だ。

Facebook よりも赤裸々に自身の事を好き勝手書いているではないか。加えて Twitter や Instagram など自分を構成する要素をいくつものツールやアプリを使ってあまつさえ公表している。

これでは個人情報管理など到底無理である。自分から情報をばらまいているのだから。

では仮に情報が使われたとして、それが自分に跳ね返ってきた時、行動を左右されなかったら良いのではないかと考えたが果たしてそれは確証が持てるのか。

鑑賞中は、宣伝くらいで投票先を変えるノンポリがアホだと思っていた。

先の参院選でも“N党”や“れ新”に投票した無党派層のことも現在自縄自縛している韓国人と同じくらいアホだと思っていた。かつて日本が民主党によって沈没させられたように、ブームというものを感じたからだ。

しかし、このブームは個々人の目と耳から入る情報によって生まれる。冷静に考えればおかしいと思えることも煽動されて判断が鈍ってしまうのだ。

そう思うと人を洗脳することはたやすい。

たかが、広告でも人の行動は変えられてしまうのだ。

 

民主主義の限界を見てみたい方は「グレートハック」を超絶オススメする。

自分は自分の意思で投票したのだと確信している有権者も自身の判断を疑ってみてほしい。

最後にデイビッド・キャロル准教授の言葉を紹介したい。

誰もプロパガンダの成功を認めない

なぜなら

感化されやすい自分

プライバシーの欠如

プラットフォームへの依存による民主主義の崩壊を認めたくないから

 

 

それにしてもNETFLIXはとんでもない作品を作ったものだ。取材力、構成力、企画力、影響力どれをとっても素晴らしい。

 

以上、本日は大変真面目に書いてみました。

長文になりましたが、お付き合いありがとうございます。